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最高裁判所第二小法廷 昭和56年(オ)473号 判決

上告人

砂川龍昇

右訴訟代理人

仲武

被上告人

尹鳳鱗

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人仲武の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、被上告人が本件仮登記担保権による自己固有の権利実行手続として上告人に対して提起した本件仮登記に基づく本登記手続をするについての承諾及び右本登記がなされたときは本件不動産を明渡すことを求める本訴各請求は、いずれも正当な法的利益があるものとして許されるべきであるとした原審の判断は、その結論において正当として是認することができる。論旨は、当裁判所大法廷判例(昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日判決・民集二八巻七号一四七三頁)を正解しないで原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(宮﨑梧一 栗本一夫 木下忠良 鹽野宜慶 大橋進)

上告代理人仲武の上告理由

原判決は判例―昭和四九年一〇月二三日最判昭和四六年(オ)第五〇三号、民集二八・七・一四七三―に反し破棄さるべきである。

即ち、仮に請求原因1ないし3の事実のとおりとしても、被上告人は本訴を提起する正当な利益を有しない。すなわち、

(一) 本件不動産については、(イ) まず大阪市信用保証協会の申立にかかる大阪地方裁判所堺支部昭和五二年(ケ)第二二〇号任意競売申立事件につき同年一二月二六日競売手続開始決定(同月二八日登記簿記入)があり、(ロ) 次に大阪府中小企業信用保証協会の申立にかかる同支部昭和五三年(ケ)第一八四号任意競売申立事件が同年八月二三日(イ)の事件に記録添付され、(ハ) さらに訴外金の申立にかかる同支部昭和五四年(ケ)第五号任意競売申立事件が同年一月二三日(イ)の事件に記録添付されたが、その後(イ)の事件が同年九月一八日取下げられて(ロ)の事件につき競売手続開始決定を受けた効力を生じたところ、(ロ)の事件も昭和五五年一月一四日取下げられて(ハ)の事件につき右記録添付の昭和五四年一月二三日に競売手続開始決定を受けた効力を生じた。

(二) 他方、被上告人はこれよりさきに既に昭和五三年九月九日本訴を提起しているものの、被上告人主張のとおり被上告人の卞に対する本件不動産についての代物弁済予約完結の意思表示が同人に到達した効力を生じたのは、(ハ)の事件につき競売手続開始決定を受けた効力を生じた日より後の昭和五四年三月一四日であるので、被上告人の本件不動産に対する仮登記担保権の実行手続着手は結局右同日といわなければならない。

(三) すると、(ハ)の事件の競売手続が右仮登記担保権の実行手続より先に着手されている関係となるから、被上告人は(ハ)の事件の競売手続に参加して自己の債権の満足をはかるべきであり、本訴請求は許されない。

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